2011年5月18日水曜日

Antiwebの設計 - プロセス

パフォーマンスとセキュリティのために、Antiwebは一群のunixプロセスである。本稿は異なるプロセスの役割と責任を述べる。

下図はプロセスと実行中のAntiwebシステムの責任を図示したものである。



ハブ(Hub)プロセス

ハブプロセスは通常、Antiwebシステムにおいてもっとも忙しいプロセスである。その責務は以下のとおり。

  • unixソケットを通じて新しい接続を受け付ける。その接続はワーカープロセスにつなげられるか、あるいはスーパーバイザ接続につなげられるかする。
  • インターネットからHTTP接続を受け付ける。リクエストされた仮想ホスト(vhost)に基づいて接続を適用すべきワーカーを決定し、接続から読み込んだデータをunixソケット越しにワーカーに流す。このプロセスで、ハブプロセス中のソケットを閉じるので、そのソケットはワーカーにおいてのみ開かれていることになる。
  • ワーカープロセスからのすべてのログメッセージを受け取り、それをロガープロセスに転送する。
  • プロセス間メッセージをルーティングする(たとえばスーパーバイザ接続)。

他にハブについて注記すること:

  • ハブプロセスは、ハブ設定ファイルにおいて指定されたユーザないしUIDにおいて動作する。
  • そのプロセスが権限を持たない空ディレクトリに対してchroot()される。
(訳注:Antiwebがどれほどセキュリティを意識しているかを述べている。)

ロガー(Logger)プロセス

ロガープロセスはハブプロセスとunixソケットで接続している。その唯一の仕事はハブプロセスからログメッセージを受け取って、それらをディスクに書き込むことである。ワーカーがログプロセスを作ると、それがハブを通じてロガープロセスにルーティングされる。

  • ハブ設定ファイルにおいて指定されたユーザないしUIDにおいて動作する。
  • 書き込み権限を持つaw_logディレクトリにchroot()される。
  • ロガープロセスはログファイルをchmod()するので、ログファイルは全体に読み書き可となることはけっしてない。

ワーカー(Worker)プロセス

ワーカープロセスはHTTPリクエスト処理の重量挙げを行なう。

  • worker confに指定されたユーザないしUIDにおいて動作する。
  • オプションとして chroot()される。
  • クライアントソケットと接続して転送されるので、ワーカープロセスは後続のHTTPリクエストをこれらのソケットにおいて処理する。それらはハブを経由しない。

Antiweb Tip
なぜ複数のワーカーを動作させたいか?

  • 権限を分けたvhosts
  • SMP/マルチコア
  • ディスクレイテンシの縮小
起動時、各ワーカープロセスはその設定ファイルを読み、HTTPリクエストをディスパッチするための関数をコンパイルする。この関数は与えられたマウントポイントとその他の存在する機能を処理する。起動後、ワーカープロセスはこの設定ファイルを二度と開かない。新しい設定ファイルを提供する唯一の方法は、スーパーバイザプロセスを使ってメッセージを送ることである。これは設定ファイルを含まないルートにワーカーをchroot()させるために不可欠のことだ。
ハブによってそのワーカープロセスが関心を持つべきvhostsを登録すると、そのワーカープロセスはハブ接続を「ロック」して追加のvhostsを登録できないようにする。vhostsを後で追加するには、その接続は手動でスーパーバイザプロセスからアンロックしなければならない(これは、ワーカー設定を-reloadするときに舞台裏で起きることだ --- これと関係する unlikely attack の可能性を見よ)。正しくないワーカー設定を-reloadさせようとすると、Antiwebは新しい設定をインストールせず、もとの設定を使い続ける。ワーカー設定を-reloadしてそれが正しくコンパイルされたが、HTTPリクエストの処理中に何かエラーが生じた場合、Antiwebはワーカーを殺してその理由をsyslogに記録する。

権限の分割
  • ワーカープロセスが自身に属していないvhostsの接続を盗むことはできない。
  • ワーカープロセスが他のワーカーによって作られたログメッセージをインターセプトすることはできない。

Antiwebの設計 - メモリ管理

Antiwebにおいてもっとも重要なメモリ管理システムはlispのガベージコレクタである。AntiwebをサポートするCommon Lispの実装の多くは、すばらしいガベージコレクタを持っているので、負荷の高いベンチマーク以外ではけっして止まっているように見えることはないはずである。

lispの外側では、Antiwebは2つの重要なデータ構造 conns および ioblocks を持つ。これらのデータ構造はファイルsrc/libantiweb.hに定義されている。 拡張子と関係なく、これはCのヘッダファイルではない。lispとCコンパイラの双方でパースできる特殊な書式である。

Antiwebプロセスによって使われているメモリのを-roomコマンドでブレークダウンすることができる。CMUCLを使ってワーカを探索する様子を以下に示す。

# antiweb -room /var/aw/example.conf

"---ANTIWEB MEMORY STATS---
Dynamic Space Usage: 1,946,272 bytes (out of 512 MB).
Read-Only Space Usage: 24,024,304 bytes (out of 256 MB).
Static Space Usage: 3,665,792 bytes (out of 256 MB).
Control Stack Usage: 1,636 bytes (out of 128 MB).
Binding Stack Usage: 88 bytes (out of 128 MB).
The current dynamic space is 0.
Garbage collection is currently enabled.

conns and ioblocks:
Allocated conns: 2, 470 bytes
Allocated ioblocks: 1, 4112 bytes, 14 in use, 99.7% overhead
Free conns: 2, 470 bytes
Free ioblocks: 514, 2113568 bytes
Total: 2118620 bytes + malloc overhead
---END OF ANTIWEB MEMORY STATS---"

ファイル src/libantiweb.c を読んでみると、Antiwebがconn構造体とioblock構造体をmalloc()しながら、それらをけっしてfree()しないことに気づくであろう。Antiwebは、その構造体を使い終わったら、それをフリーリストにプッシュする。次に必要になったときは、直近にフリーリストにプッシュしたものをポップする。connおよびioblock構造体は常に同一の大きさであるので、これがAntiwebに可能なのである。

メモリの解放は危険とみなす

上記の -room の出力において、connおよびioblockの数値は高水位に表示されている。トラフィックが重いとき、より多くのメモリが割り当てられる。トラフィックが落ち着くと、フリーリストの底の方は必要に応じてカーネルによってスワップアウトされる。

2010年12月31日金曜日

Antiwebの設計 - サーバ設計

nginx、lighttpd、fhttpd、そしてAntiweb3と同じように、Antiweb4は非同期ないしイベントベースないしノンブロッキングなサーバです。つまり、複数のクライアント接続を単一のスレッドで制御します。Antiwebシステムはunixプロセスの集まりです。接続はプロセス間でsendmsg()によって転送されます。これが生じると、ソケットから最初に読まれたデータはそのソケット自身を通じて転送されます。ソケットは常に送信側のプロセスにおいて閉じられます。
ひとつのプロセスの中で多重接続を行なうため、Antiwebはsrc/libantiweb.hに定義されている状態機械データ構造を使います。Antiwebは、level-triggeredモードにおいて、kqueue()またはepoll()のいずれかのステートフルなイベントAPIを必要とします。
  • 32bit linux/CMUCLシステムにおいて、10000の非アクティヴなkeepalive接続は約3Mのユーザ空間メモリを消費した(2つのlispイメージに加えて)。
  • 非アクティヴなkeepalive接続の数は新しい接続において取るに足らない性能影響を持つ。
ファイルの送信には3つのモードがある。すなわち、中、小、大である。
  1. 中: これらのファイルはファイルのデータをユーザ空間にコピーするのを避けるためにmmap()される(メモリーマップされる)。データはファイルシステムから直接カーネルのソケットバッファにコピーされる。
  2. 小: これらのファイルはユーザ空間バッファに読まれる。というのは、小さなread()は往々にしてmmap()+munmap()より安価だからである。
  3. 大: Antiwebは大きなファイルにユーザ空間バッファを使う。これは多数の大きなファイルをクライアントが並列に要求した場合にディスクスラッシングを起こすのを避けるためであり(lighttpdからのアイデアである)、また32bitシステムでアドレス空間を使い切ってしまうのを避けるためでもある。
そいつをスーパーサイズしろ: Antiwebは64bitのoff_t型とlispの桁数無制限の整数をすべてのシステムで使っているので、Antiwebはいかなる容量のファイルでも扱うことができる。また、3つすべての送信モードにおいてダウンロード再開をサポートしている。
Antiwebのデータ構造はパイプラインのために設計されている。Antiwebはベクター型I/O(scatter-gather I/Oとしても知られている)をほとんど全面的に使っている。Antiwebの内部メッセージパッシングプロトコルもパイプラインを使っている。たとえば、ひとつのHTTP接続があって、それが小さなファイルについて2つのリクエストがあり、中くらいのファイルのリクエストが1つ続いてパイプラインされているとき、単一のwritev()システムコールで以下のように対応する。
  • 最初の2つのファイルのためのHTTPヘッダとファイルコンテント
  • 中くらいのファイルのためのHTTPヘッダ
  • カーネルバッファを満たすまで中くらいのファイルをメモリにマップする
続いて、生成されたログメッセージをすべてハブプロセスにwritev()で書き込む。ハブはログメッセージをロガープロセスに別のwritev()で転送する。最後に、ロガープロセスがメッセージをaxslogファイルに追記する。
ワーカープロセスの接続統計が見たいなら、-statsコマンドを使う。

# antiweb -stats /var/aw/example.conf
...
Keepalive Time: 65 seconds
Total Connections: 41 HTTP requests: 72 Avg reqs/conn: 1.8
File descriptor usage (estimate): 17/32767
Current Connections: 11
Keepalives: 7 Sending files to: 2
Proxy: Sources: 0 Sinks: 0 Idle: 0
Timers: 0 Hub: 1 Unix Connections: 1
Lingering: 0 Zombies: 0
...
ふだんは愛しているけれど、ときどきパイプラインは悪い。Antiwebは特定のレスポンスにおいてパーシステントなHTTP接続を切断する。
  • 4XXおよび5XX HTTPエラー - niktoのようなウェブ脆弱性スキャナがそのリクエストの95%以上をこれらのエラーとするとき、blindになるのを防ぐ。
  • ディレクトリリスト - パイプラインが再帰的にクロールするのを防ぐ。
接続を完了するとき、Antiwebはソケットと、HTTP/1.1で要求されているようにlingerの書き込みディレクションを切断する。AntiwebはHTTP/0.9およびHTTP/1.0のクライアントを常にgracefullyにデグレードする。Antiwebは第一級のIPv6サポートを持っている。もし、4XXおよび5XXエラーをパイプラインしたいなら、2つの選択肢がある。
  1. Antiwebのrewriteモジュールを使って問題のあるリクエストを実在するファイルへのリクエストに変更する。
  2. Antiwebのfast-filesモジュールを使う。これはメモリキャッシュであって静的なコンテントの加速化、HTTPヘッダの事前生成、ネガティヴキャッシュ、そして404エラーの永続化/パイプライン化をサポートしている。
Antiwebは最初からセキュリティを意識して設計されている。Antiwebの設計中に下された設計上の決定を以下に列挙する。
  • 仮想ホストはプロキシを使わずに権限を分離している。ハブが接続を扱うべきワーカーを決定すると、ハブはワーカープロセスにソケットし、その接続についてそれ以上のことは一切行なわない。ワーカープロセスはハブと異なるUIDsの下で動作する(ワーカープロセスもそれぞれ異なる)。ワーカーはオプションとしてchrootすることがある。
  • ワーカーはログファイルにアクセスしない。すべてのログメッセージはUnixソケットを通じてハブに送られる。続いて、ハブはそのメッセージをロガープロセスに送る。つまり、ワーカープロセスはそれまでに生成されたログメッセージを盗むことがないし、他のワーカープロセスによって生成されたログメッセージを盗むこともない。同様にハブはそれまでに生成されたログメッセージを盗むことがない。
  • CGIプロセスはリソース制限によって制約できる。
  • unicodeをサポートしないLispであっても、Antiwebは内部データならびにファイル名をUTF-8でエンコードする。これにはすべてのコードポイントを最短の表現となるようにし、不正なサロゲートペアがないように検証することが含まれている。(訳者注:本当だろうか? 大言壮語ではないか?)
  • Antiwebプロセスは予期せぬ状態のイベントの後始末や回復をけっして試みない。実行できなかったプロセスは失敗する。失敗しなかったプロセスは終了後に後始末される。
AntiwebにはAnti Webpagesと呼ばれるWebページを構築する実験的な技術が含まれている。これはPerlに触発されたプログラムで、意味のある空白類でページレイアウトを表現したり、HTML/CSS/Javascriptを貼り合わせたりといった機能を持つ。

Antiwebの設計 - Antiwebの新世代

Antiwebは、Hoytechによって、Common Lisp、C、そしてPerlで書かれたウェブサーバである。Antiwebは「コンセプトの検証」ではないし、「実験的なコード」でもない。Antiwebの中心的な設計は(この設計書に解説しているとおり)次の10年以上にわたって安定して使えることを意図している。
Antiweb4に強い影響を与えたウェブサーバはnginxlighttpdの2つである。Antiwebを設計するにあたって、これらやその他の優れたサーバを自由に探検させてもらった。もうひとつ影響されたサーバを挙げるなら、fhttpdがそれに挙げられる。
なぜまたウェブサーバか? われわれの意見では、上記のサーバを用いるときの最大の問題として、それらがlispで書かれていない、ということがある。われわれが学んだサーバは、拡張言語で接木されている(nginxにはPerlが、lighttpdにはLuaが採用されている)。Antiwebは違う。他の言語を使うCプログラムとするのではなく、AntiwebはC(とPerl)を使うLispプログラムなのである。

Anti Webpages - ページとレイアウト

Anti Webpageは.awpで終わるファイルである。ほとんどすべてのAntiwebのファイル同様、.awpファイルはconfsである。各.awpファイルはあなたのウェブサイトの.awp/ディレクトリへのマップである。このディレクトリには複数のページを持つことができ、それぞれはxconfで示される。以下に、1つのページxconfを持つ、簡単な.awpファイルを示す。
(page "index.html"
:layout #"
content |
"#
:content #"Hello world!"# )
  • 文字列は正規の二重引用符 (") ないし特殊な #" および "# で区切ることができる。この特殊引用符は引用符文字、バックスラッシュなどをエスケープせずに含ませることができる。
  • :layoutオプションはawpファイルのセグメントを置くためのものである。そこにはバーティカルバー (|) を終端とする行が最低一行必要になる。すべてのバーティカルバーは「並んでいる」べきである。
上記の例では、:contentセグメントがページの真ん中にある。複数のポジションを示すには複数のバーを使う。たとえば以下のコードでは:contentをページの右端に表示するように指示している。
(page "index.html"
:layout #"
| content |
"#
:content #"Hello world!"#
)
別の書き方もある。位置修正子 locator modifier (@) を使ってセグメントの位置を示すことができる。以下の例は同じ意味を持つ。
(page "index.html"
:layout #"
content@r
"#
:content #"Hello world!"#
)
@rはそのエリアの右に配置することを示す。使用可能な修正子は@r @l @t @b @tl @tr @bl @br である(ただし文字の順序は問題にしない)。やや複雑な例を示そう。
(page "index.html"
:title "Antiweb Manual"

:layout-width 800
:layout #"
logo@r | | header@l | slogan |
nav@rt | | content@tl |
footer |
"#

:header #"<h1><u>Antiweb Manual</u></h1>"#
)
上記の.awpファイルがレンダリングされると、ひとつのセグメントが表示され (:header) 、残りはNILとなる、というのはまだそれを追加していないからである。レイアウトとは関係ない特殊キーワードがある。
  • :title - このページのHTMLタイトル。
  • :css - CSSコード。複数の:cssパラメータをおいてよい。すべてHTMLページの上部のCSSブロックに追加される。
  • :js - Javascriptコード。複数の:jsパラメータをおいてよい。すべてHTMLページの上部のJavascriptブロックに追加される。
  • :js-end - :jsと同じだが、そのコードはページの上部ではなく、ページの下部のJavascriptブロックに追加される。

Anti Webpages

Anti Webpagesは、実験的で革新的な、Webコンテンツの新しい生成方法である。Antiwebのサーバ部分は、Antiweb Pagesから切り離されており、より直球である --- Antiwebサーバ自身の成し遂げていることと言えば、可能な限り効率的でセキュアにHTTP 1.1を実装しているということに尽きる。これはちょっとおかしな感じがする。Antiweb Pagesは安定していない、というのは、その実際の仕様がそのうちに変更され得るという意味においてのことである(そう近い話とも考えていないが)。
Anti Webpagesの要点は、静的なHTMLファイルを生成することであり、それもAntiwebによって非常に効率的に生成できることにある。Anti WebpagesはAJAXコールバックとフラットファイルないしBerkeleyDBデータストアをサポートするが、基本的には静的コンテンツまわりを処理することがすべてであり、このマニュアルに記載されているのがすべてである。

2010年11月23日火曜日

CMUCL

CMUCLを使って、Antiweb環境を構築しようと思う。

SBCLを使わずにCMUCLを使うのは、Doug Hoyteに敬意を払ってのことである(ミーハー)。

日本語を使う場合、SBCLの方が何かと便利なのであるが、SLIMEを使わないことを決めたので(これもDougへのオマージュ)、表面的な便利さは捨てて、ハードコアにCMUCLを使ってみることにしたのである。

おいらがGMOから借りているVirtual Private Serverは、すでにUbuntu Serverに入れ替えてある。

だから、Ubuntu Serverを自宅PC(恥ずかしながらWindows Vista 64bitである)のVirtual BoxにUbuntu Serverを入れて、そこで環境構築を練習しよう。

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む? 64bitダメなの?
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